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【税務調査】過大な役員報酬に要注意

税務調査で細かく見られる役員報酬は、取締役や監査役など会社の役員に対する報酬が過大である場合、法人税法第34条第2項に「不相当に高額な部分の金額は、損金に算入されない」という規定があるため、過大な部分は否認対象となります。今回は、役員報酬が過大な支給かどうかの判断基準について説明します。

役員報酬とは

そもそも役員報酬とは、役員(取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事、および清算人)へ職務執行の対価として支給される報酬となります。会社法361条では、役員報酬を定款の定めまたは株主総会の決議で定めることとしています。
法人税法34条において、役員報酬の額のうち、以下の3つが損金の額に算入できると定められています。
① 定期同額給与 ⇒ 同額で1ヶ月以下の期間毎に支給される報酬のことです。
② 事前確定届出給与 ⇒ 役員賞与の支給金額と時期を事前に税務署へ届け出て支給される報酬のことです。
③ 業績連動給与 ⇒ 業務に連動して支給される役員への報酬のことです。
詳しい内容については、当社ブログ「初めての役員報酬」を参照ください。

不相当に高額な役員報酬であるかの判断基準

税務調査にて、以下の基準により役員報酬が過大であるか判断されます。
① 実質基準(倍半基準含む)
② 形式基準
以下で詳しく説明していきます。

実質基準とは

実質基準は、はっきりとした基準額があるわけではなく、役員一人一人の「職務に対する妥当な金額か」「業績と比べて高額ではないか」など実態と照らし合わせながら判断されます。
実質基準において比較されるのは、以下4点を総合的に勘案して算定した額を基準としています。
① 職務の内容
⇒ 役員の役職(監査役・取締役など)や常勤・非常勤なのか、経験年数、実質的にどの程度経営に携わっているかなどを見られます。
② 会社の業績状況
⇒ 役員報酬が業績と見合わない額で支給されていないかを見られます。
③ 会社での従業員に対する給与の支払い状況
⇒ 役員報酬と従業員への給与と比較し、大きな乖離が無いか見られます。
④ 同規模・同業他社の役員報酬の支払い状況 
⇒ 他社と比較し役員報酬が適切かどうか見られます。後述の「倍半基準」を基に判断されることになります。
実質基準は、税務調査で指摘されないためにも、根拠を示せるようにすることが重要です。
国税庁「民間給与実態統計調査」において、企業規模別ごとに分類調査されています。同業他社の役員報酬がいくらなのか相場を参照してみると役員報酬の決定時に1つの指標とすることもできます。

倍半基準とは

上記の実質基準の「同規模・同業他社の役員報酬の支払い状況」を調べる際に、その適正額算定の際に参考とする納税者の同業類似法人の拾い出しをする基準です。倍半という文字通り、納税者の売上金額等の2倍以下~0.5倍以上(半分)の範囲の法人を拾い出します。拾い出した法人の役員報酬の支給状況を比較します。税法上、倍半基準は役員報酬の適正額の算定だけでなく、推計課税の場面でも多く利用されるものです。この倍半基準を念頭に報酬額の決定をしても良いでしょう。

形式基準とは

形式基準とは、定款の規定または株主総会の決議内容にもとづいて役員報酬額を判断する基準です。例えば、定款や株主総会で役員報酬の総額を定めている場合に、実際の役員報酬の合計額がその金額を超えていると、超えた部分が過大と判断され損金不算入となります。
事業年度開始から3カ月以内であれば、役員報酬を決定できます。取締役会で決めた個々の役員報酬の合計額が、いつの間にか、定款の規定または株主総会で決めた総額を超えていると否認される可能性があります。特に、貸付金利息や社宅の会社負担等の給与に当たる経済的利益を見落とてしまっている場合は、それも加味されることになり、結果的に形式基準の上限額を超えることになり、税務調査で損金不算入として扱われることになりかねません。そのような事態を回避するためにも、改定時には、以前株主総会で設定した上限額及びその他の経済的利益の有無についても確認を行うと良いでしょう。

まとめ

上述にて、役員報酬を損金算入するには、「定期同額給与」「事前確定届出給与」「業績連動給与」の要件を満たす必要があります。その上で、その報酬額が何を基準に決定されたのか税務調査では確認されます。
役員報酬は利益調整(税金対策)に利用されることが多く、特に中小企業の税務調査では重点的に確認されます。過年度の役員報酬が過大であったと指摘された場合は、法人税の増加分の負担だけでなく、加算税・延滞税も課されることになります。否認されないためにも、合理的に報酬額を算定したことを説明できるように準備しておくことが大事です。

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