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給与計算方法について

 「労務の対価」と言われている給与ですが、給与計算方法を正確に理解している方は少ないと思います。従業員を雇用している場合、必ず毎月正確に給与計算を行う必要があります。給与計算は経験と知識が求められるだけでなく、様々なリスクを含んだ業務でもあります。今回は、給与の計算方法や基本的な内容、注意点を解説していきます。

給与計算前に準備・確認しておくこと

 給与計算前に準備しておくべき事項は以下3つの項目です。

① 就業規則と賃金規定を定めておく

 就業規則は労働基準法により「常時10人以上の労働者を使用する使用者は就業規則を作成し、行政官庁に届出なければならない」と規定されています。つまり、10名以上の従業員を雇用する場合は法的に就業規則の作成・届出をする必要があります。また、「給与の支払」など就業規則では必ず掲載しなければならない絶対的必要記載事項があるため、作成の際は注意が必要です。金銭トラブルが発生しやすいため、就業規則とは別に給与規程や賃金規程で明確にしておくことが大切です。

② 社会保険への加入手続き

 給与計算では、社会保険への加入の有無は重要な項目です。加入条件を満たしている従業員は加入義務がありますので、手続きは忘れないようにしましょう。対象保険は「健康保険」「厚生年金」「雇用保険」「介護保険」です。給与計算では、給与から天引きする必要があります。

③ 従業員の情報管理(把握及び更新)

 従業員情報とは、具体的には従業員の氏名や住所、生年月日、家族の扶養状況などの基本情報から、基本給、業務内容、勤続年数や役職などの情報を指します。勤務地によって通勤手当も変わることもあるでしょう。基本情報の把握のために、従業員へ「扶養控除等(異動)申告書」の提出してもらうようにしましょう。このような情報は、給与計算で大きく関係しますので最新情報を把握しておきましょう。

給与計算のやり方

給与計算は下記の5つの流れに沿って行われるのが一般的です。

① 従業員の勤務管理(労働時間)

 給与計算の前に、勤怠情報を取りまとめます。タイムカードや出勤簿をもとにして、通常の労働時間の計算のほか、時間外労働分など従業員ごとに1ヵ月あたりの労働時間と残業時間を集計します。

② 総支給額を計算する

 給与として支給する額の計算を行います。

 総支給額は、「固定的給与」(基本給・職務手当)と「変動的給与」(残業代や深夜手当・休日手当)を計算します。残業代や深夜手当、休日手当は、下記の最低割増率を乗じた計算式によって求められます。

・ 残業代(時間外労働):25%(時間外労働が月60時間以下の場合)
            50%(時間外労働が月60時間超えの場合)

・ 休日手当:35%

・ 深夜手当(22時~翌日5時までの労働):25%

※上記手当は、条件を満たしていれば、併用適用可能です。

《残業代の計算式》
時間外手当=1時間あたりの賃金×割増率×残業時間

※1時間当たりの賃金は「月給÷1ヵ月あたりの平均所定労働時間」から算出(月給は基本給に役職手当・資格手当等を含めます)

 例えば、深夜手当の計算では、残業6時間のうち深夜労働が1時間含まれる場合は、5時間分が25%増しで1時間分が50%増しとなります。

※時間外手当に関する割増率は労働基準法で定められた最低率であり、この基準を下回ってはならず、下回った場合は法令違反となります。

 他、各種手当(通勤手当、皆勤手当、家族手当、住宅手当など)もそれぞれ課税対象となるのかしっかり確認しましょう。例えば、通勤手当は業務に関する経費扱いとなりますので、月額限度額までが非課税となります。

 その他、該当従業員に遅刻や早退、欠勤があった場合は、該当時間に応じた控除額計算が必要です。また、社員寮費や持ち株など、従業員それぞれの状況に応じた控除も忘れないように注意しましょう。

③ 社会保険料の計算をする(協会けんぽに加入している場合)

 社会保険料(健康保険料・厚生年金・介護保険料)は、毎年4~6月の平均給与をもとに決定される「標準報酬月額」を使用します。それぞれの従業員の標準報酬月額に、従業員負担分の各保険料率を掛けて計算します。介護保険料がかかるのは、40~64歳の従業員だけです。

 社会保険料の計算は年金事務所から送られてくる「健康保険厚生年金保険資格取得確認および標準報酬決定通知書」に基づき、保険料額表に照らし合わせて各従業員の負担額を算出します。

 雇用保険は、労使折半で下記計算式にて求めます。

《雇用保険料の計算式》
雇用保険料=総支給額×保険料率

 総支給額は通勤手当などの手当も含みます。保険料率は厚生労働省で事業種ごとに異なる率を定めており、「一般の事業」「農林水産・清酒製造の事業」「建設の事業」の3区分ごとに決められており、一般事業では9/1000(会社負担:6/1000、労働者負担:3/1000)となっています。会社がどの区分に該当するか確認し、総支給額に保険料率を掛けて天引きするようにしましょう。

④ 所得税・住民税の計算をする

 原則、所得税および住民税は、会社が給与から天引き徴収し、従業員の代わりに税務署に納付する仕組みを取っています。月々の給与から差し引く所得税(源泉所得税)は、「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」を確認して行います。従業員が提出した「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」をもとに、扶養親族の数を確認して所得税額を算出します。住民税は、毎年各自治体から事業所に送られてくる「住民税課税決定通知書」を参照し、通知書に各月別に会社が給与から天引きする金額が記載済みですので、その金額を給与から天引きします。

⑤ 差引支給額を計算する(手取り額の確定)

 総支給額と控除額の計算後、総支給額から控除額を差し引いた振込支給額を算出します。

まとめ

 注意点として、給与計算は社会保険料や税金の代理納付の意味合いがあります。ミスがあると、訴訟の対象に発展し、多額の金額を要求されるリスクがあります。それだけでなく納税では追徴課税などを受ける可能性もありますので正確な作業が必要です。また、従業員の個人情報はとても重要な情報です。個人情報保護法に沿った対応をし、給与計算時に利用するパソコンや賃金台帳、給与明細などの取り扱いに細心の注意を払いましょう。給与計算の基礎知識や具体的な計算方法について理解を深め、料率の変更や法改正にも注意してアンテナを張っておきましょう。

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