仮想通貨の確定申告について

ここ数年で、仮想通貨(暗号資産)に投資する人が年々増えています。しかし、売買で得た利益には「税金」がかかる場合があり、確定申告が必要になることもあります。特に、複数の通貨を売買したり、損失が出た場合には、計算やルールが少し複雑です。今回は、会社員や主婦など個人の方向けに仮想通貨の確定申告の基本を解説していきます。
仮想通貨とは
仮想通貨とは、インターネット上で取引されるデジタルなお金のことです。銀行を介さずに世界中で使え、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)などが代表例です。
仮想通貨に税金がかかる場合
まず大前提として、仮想通貨をただ「持っているだけ」では課税されません。しかし、次のようなケースでは課税対象になります。
- ・仮想通貨を日本円に換金した
- ・仮想通貨同士を交換した[例:ビットコイン(BTC)→イーサリアム(ETH)]
- ・仮想通貨で商品やサービスを購入した
- ・マイニングやステーキングで仮想通貨を得た
- ・エアドロップで仮想通貨をもらった
このような行為で得られた利益は「雑所得」として所得税の課税対象になります。
なお、暗号資産取引に係る収入金額が300万円を超える場合、事業所得と扱われるケースもあります。事業所得となるメリットもありますので、取引金額が大きくなってきたら、税理士に相談することをおすすめします。
申告が必要な場合
仮想通貨で利益が出ても、すべての人が申告しなければいけないわけではありません。会社員やアルバイトなど、給与所得がある人の場合、副業などの雑所得が年間20万円を超えると確定申告が必要です。
一方、専業主婦や学生、無職の方など、所得がない場合は、基礎控除48万円を超えた分について課税対象となります。例えば、年間で仮想通貨の利益が50万円、他に収入がないという場合は、確定申告が必要になります。
仮想通貨の利益の計算方法
仮想通貨の利益は、「売却価格-取得価格(購入時の金額)」で計算します。
たとえば、ビットコインを2024年に50万円で購入、2025年に70万円で売却
この場合、利益は「70万円-50万円=20万円」となります。
ただし、複数回にわたって購入・売却している場合は「総平均法」や「移動平均法」で計算する必要があり、取引履歴をしっかりと記録しておくことが大切です。
移動平均法と総平均法の計算方法
仮想通貨の取得価格計算には主に「移動平均法」と「総平均法」があります。
下記、それぞれの計算事例です。
【移動平均法】
取引のたびに平均取得単価を更新する方法
例:
1.初回購入:2BTC×100万円=平均単価100万円
2.追加購入:1BTC×120万円
→ (100万円×2+120万円×1)÷3=106.7万円
【総平均法】
一定期間の全購入額を合計し、平均取得単価を計算する方法
例:
1.1年間の購入額合計:500万円
2.総購入枚数:5BTC
→500万円÷5BTC=100万円
移動平均法の方が取引ごとに単価が変動し、実際の市場価格に近い値で計算できます。総平均法は一定期間でまとめて計算するため、計算負担が少ないのがメリットです。
仮想通貨の損失が出た場合
仮想通貨で利益が出た年に「損した取引」もあれば、その損失を差し引いて税金を軽くできることがあります。これを「損益通算」といいます。
ただし下記の注意点もあります。
- ・雑所得内のみで損益通算が可能
- ・他の所得(給与所得など)とは通算できない
- ・損失の繰越(翌年以降に持ち越し)はできない
そのため、利益が出た年はもちろん、損失が出た年でも「損益通算の可能性があるか」をチェックしておくと良いでしょう。
たとえば、
イーサリアム(ETH)を売って、+30万円の利益
ビットコイン(BTC)を売って、-10万円の損失
この場合、課税対象の所得は30万円-10万円=20万円になります。
確定申告のやり方
仮想通貨の申告も、基本的には他の所得と同様に「確定申告書」を作成して税務署に提出します。主な流れは以下のとおりです。
- 取引所から年間の取引履歴をダウンロード
- 利益・損失を計算(Excelや専用ソフトを使用すると便利)
- 国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で申告書を作成(または税理士へ依頼)
- e-Tax(電子申告)または紙で提出
仮想通貨の計算ツールは様々あり、取引履歴の自動読み込みや総平均法での計算が可能で初心者にも使いやすいツールもありますので、自分に合ったツールを選択すると良いでしょう。
申告しないとどうなる?
仮想通貨の利益を申告せずに放置しておくと、税務署から指摘を受ける可能性があります。仮想通貨の取引記録は取引所に残っているため、税務署も調査可能です。
無申告が発覚すると、下記のようなペナルティが発生することがあるため注意が必要です。
- ・無申告加算税(15~20%)
- ・延滞税(最大年14.6%)
- ・重加算税(35~40%)←意図的に申告をしなかった場合(悪質な場合)
後から追徴されると大きな負担になるため、早めの申告がおすすめです。
まとめ
仮想通貨の利益は雑所得として扱われ、確定申告が必要です。仮想通貨は値動きが大きく、利益が出ると嬉しいものですが、忘れてはいけないのが「確定申告」のことです。知らなかったでは済まされないため、利益が出た年はきちんと申告をしましょう。仮想通貨の税金は少し複雑ですが、しっかり理解すれば恐れる必要はありません。
ポイントを載せておきます。
- ・仮想通貨の利益は「雑所得」に分類
- ・20万円超の利益がある人は原則申告が必要
- ・雑所得内での損益通算も可能だが、繰越控除はできない
- ・記録を日々つけておくと確定申告がスムーズ