残業代の支給にあたって

残業代の計算は通常賃金と違って条件に合う計算に従って計算し支給しなければなりません。残業とは、規定労働時間を超えて行った労働を指します。残業代計算においては、休日出勤を行った場合も残業として計算します。土日祝日が休みの企業で休日出勤をした場合、代休を取るか、休日出勤分の賃金を支払うことになるでしょう。この場合も、平日に行った残業と同じように、賃金規定にもとづいて残業代を支払わなければなりません。今回は残業代の具体的な計算方法を解説していきます。
割増賃金
割増賃金は以下のとおりです。
| 区分 | 条件 | 割増率 |
|---|---|---|
| 時間外 | 法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えたとき | 25%以上 |
| 時間外労働が限度時間(1ヵ月45時間、1年360時間等)を超えたとき | 25%を超えるよう努める | |
| 時間外労働が1か月60時間を超えたとき | 50%以上 | |
| 休日 | 法定休日(週1)に勤務させたとき | 35%以上 |
| 深夜 | 22時から5時までの間に勤務させたとき | 25%以上 |
| 時間外+深夜 | 22時から5時までの間に時間外勤務させたとき(1ヵ月60時間まで) | 50%以上 |
| 22時から5時までの間に時間外勤務させたとき(1ヵ月60時間を超える時間) | 75%以上 | |
| 休日+深夜 | 法定休日の深夜(22時から5時までの間)に勤務させたとき | 60%以上 |
所定労働時間と1時間当たりの賃金
所定労働時間は、企業ごとに就業規則で定めている1日あたりの所定労働時間に一ヶ月あたりの所定労働日数をかけて計算します。9時から17時(1時間休憩)という企業では1日7時間が所定労働時間になります。
仮にこの企業の年間休日が121日であった場合365日―121日=244日が就業日数になります。1か月あたりの平均所定労働日数244/12ヵ月=20日。1か月あたりの所定労働時間7時間×20日=140時間になります。月給20万円だった場合、20万/140=1,429円。残業代はこの1時間当たりの賃金をベースにして計算します。
法定内残業と法定外残業
法定内残業とは(1日8時間・週40時間)を超えない残業のことです。9時から17時(1時間休憩)までの7時間が所定労働時間の企業では、9時から18時(1時間休憩)まで勤務したとしても1時間の残業代を支払わなければなりませんが、割増して支払う必要はありません。しかし9時から19時(1時間休憩)まで勤務した場合は、1時間は通常の賃金で計算し18時から19時までの1時間分を割増1.25倍で支払う必要があります。1日8時間中で残業する場合を法定内残業。1日8時間を超える残業をした場合、法定外残業といいます。
残業代の計算方法
残業代=従業員の1時間当たりの賃金×割増率×残業時間
上記の式で計算を行います。
例:1時間当たりの賃金1,429円。勤務時間9時から17時、所定労働時間7時間の条件で20時まで勤務した場合。
3時間残業したことになりますので下記の計算になります。
- ・18時までの勤務時間1時間は法定内残業になりますので
1,429円×1時間=1,429円 - ・18時から20時までの勤務時間2時間は法定外残業になりますので
1,429円×1.25(25%)×2時間=3,573円
合計 5,002円が残業代になります。
様々な働き方の残業代
フレックスタイム制
フレックスタイム制とは、定められた労働時間がなく定時をもうけず月単位で労務時間をとらえて、自由な時間に働けるようにした制度です。ただし1週間あたりの労働時間は40時間以内と決められています。1週間当たり40時間を超えた分は残業代が発生します。
裁量労働制(みなし残業制)
裁量労働制とは、実際の労務時間ではなく、あらかじめ想定した労働時間を働いたものとして賃金を支払う勤務形態です。一般的に月給20万(固定残業代●●時間分××円を含む)という求人形態にしているところが多いようです。この制度でも固定残業代の時間をオーバーした分については、残業代の支払いが必要になります。
日給制
日給制でも1時間当たりの賃金を計算して残業代を支払う必要があります。1時間当たりの賃金を計算して支給することになります。8時間を超える場合は割増率も適用されますので注意が必要です。
年俸制
年俸制は1年単位で賃金を計算する就業形態です。年俸を1年間の所定労働時間で割り1時間当たりの賃金を計算しますが、賃金計算方法は上記記載のようになります。
まとめ
働き方は様々な形がありますが、所定労働時間を超えた分については基本的に残業代が発生します。残業代不支給の場合、労働基準法違反になり、罰則が科せられる可能性があります。残業代の計算には手間がかかりますが、しっかりと計算して支給しておきましょう。
補足:36協定
1日8時間・週40時間を超える業務を行わせる場合には従業員との間に36協定を結んでおくことが必須になります。36協定の締結なく残業を行わせると労働基準法違法になります。


