事業を開始する際に消費税について検討すべきこと
新たに事業を開始した事業者は、原則として2年間は納税義務が免除されます。
(設立時の資本金の額または出資の金額が1,000万円以上である法人や特定新規設立法人に該当する法人を除く)
しかしインボイス制度が始まると、適格請求書発行事業者として登録する場合は初年度から納税義務が発生します。
原則通り免税事業者のままとするか、課税事業者となるか、検討を行う必要があります。
適格請求書を発行するかどうか
適格請求書が必要となる場面
課税事業者が仕入税額控除を受ける為には経費等の支払先から適格請求書の交付を受ける必要があります。自身が免税事業者であれば適格請求書は必要ありませんが、課税事業者であれば、経費等の支払先に適格請求書の発行を求めることになります。
顧客が適格請求書を必要とするか
顧客が国内の事業者であれば、適格請求書の発行を求めてくる可能性があります。事業者でない個人であれば適格請求書は不要ですが、副業などで事業を行っている可能性もありその把握は非常に困難です。
海外への輸出や、病院での診療(自費診療を除く)など、消費税がかからない取引以外では、適格請求書の発行を求められることがあると覚悟しておいた方が良いでしょう。
適格請求書を発行しない場合のデメリット
適格請求書を発行しない場合、顧客から競合他社と比べて割安にするよう要求されたり、そもそも取引が成立しなくなる恐れがでてきます。
例え減額して取引を成立させたとしても、売上先からは消費税分を受け取れないのに、仕入先には消費税分を払っています。本来最終消費者が負担するべき消費税が自社負担となってしまい経営が圧迫されることになります。
適格請求書を発行する場合のデメリット
適格請求書を発行する為には課税事業者にならなければなりません。
課税事業者になると消費税の申告義務が発生し、経理処理の負担が増え、納税の負担も発生します。
上記のデメリットを天秤にかけて、適格請求書を発行するかどうか検討しなければなりません。ここでは説明を省いていますが、簡易課税制度や、インボイス制度導入における経過措置など、より正確な判断をする為には専門的な知識を要することになります。
輸出など海外向けのサービスを展開する場合
消費税は国内での消費について課税されるものであり、海外で消費されるもの(輸出品等)には消費税は課税されません。しかし、輸出品等を国内で仕入れた際には消費税を支払っています。消費税が掛からないものに対して不要な消費税を支払った形になるので、その金額は税務署から還付してもらうことが出来ます。
ただし、還付を受ける為には免税事業者ではなく、課税事業者である必要があります。
原則では設立初年度は免税事業者となってしまうため、事業開始年度が終わる前に「消費税課税事業者選択届出書」を税務署に提出し課税事業者になるのを忘れないようにしましょう。
高額の設備投資を行う場合
製造業等では、事業開始時に多額の設備投資を行うことがあります。その際に支払った消費税は課税仕入として認められますが、初年度の売上によっては課税売上よりも大きくなり超過した支払税額については還付を受ける事が可能です。輸出などを行う場合と同様に、事業開始年度が終わる前に「消費税課税事業者選択届出書」を税務署に提出し課税事業者となる必要があります。
まとめ
インボイス制度開始前では、還付を受けることが出来そうな事業者のみ消費税を検討すればよかったのですが、インボイス制度開始後はほぼ全ての事業者が消費税について検討する必要に迫られます。専門的な知識も必要なため、判断に迷う際には税理士等へ相談されることをお勧めします。