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年収の壁について

年収の壁について

 2025年の税制改正により、「年収の壁」に大きな変更が加えられました。これにより、パート・アルバイトとして働く人や扶養内で働く人の働き方に影響を与える可能性があります。本記事では、改正前と改正後の違いを詳しく解説します。

年収の壁の種類

「年収の壁」には以下3つの壁が考えられます。

  • 税金に関わる壁 ⇒ 所得に対して課税される税金の壁
  • 社会保険に関わる壁 ⇒ 社会保険料の加入・支払いが発生する壁
  • 配偶者手当に関わる壁 ⇒ 労働者が会社から受ける配偶者手当の支給に関する壁

下記、それぞれの壁について詳しく説明します。

1. 税金に関わる壁

 税金に関わる壁とは、収入が一定のラインを超えることで税負担が増加したり、税制上の控除が適用されなくなったりする壁のことです。壁には以下のような「年収の壁」があります。

  • 100万円の壁:この壁を超えると住民税が発生します。所得割と均等割による計算で課税されます。(金額は目安で自治体によって変わります。)
  • 103万円の壁:この壁を超えると所得税が発生します。超えた額に対して課税されます。
  • 150万円の壁:この壁を超えると配偶者特別控除の減額が始まり、段階的に減少します。
  • 201万円の壁:この壁を超えると配偶者特別控除の適用が完全になくなります。

2025年税制改正後の年収の壁

  • 160万円の壁:所得税が発生する壁に変更(103万円から160万円へ緩和)

2. 社会保険に関わる壁

 社会保険に関わる壁とは、一定の年収を超えることで社会保険の加入義務が発生したり、扶養から外れることで税負担が増えたりする制度上の区切りを指します。

改正前

  • 106万円の壁:パート・アルバイトでも社会保険(健康保険・厚生年金)への加入義務が発生します。ただし、従業員数50人以下の企業には適用されません。
  • 130万円の壁:勤務先の規模に関係なく、社会保険の扶養から外れ、国民健康保険・国民年金への加入が必要。

2025年税制改正では変更ありません。社会保険の加入基準は従来通りです。

3. 家族手当に関わる壁

 家族手当とは、企業が従業員に家族がいる場合に支給する手当のことです。これは企業独自の福利厚生の一環であり、法律で義務付けられているものではありません。企業によって支給条件や金額が異なり、一般的には扶養している配偶者がいる場合に支給されることが多いです。支給条件によっては壁があるかもしれませんので、よく確認をした方が良いでしょう。

 厚生労働省は配偶者手当が就業調整の要因となることを問題視し、企業に対して見直しを促しています。

壁を越える時の注意点

 前項の通り、壁の種類は3つに分けることが出来ますが、壁を越えた時の影響が異なります。

 税金に関わる壁を越えた場合、超えた部分に応じて課税額が増えていきます。「給与増加額 > 負担増加額」となり、家計全体で見た手取り額が減少してしまうことはありません。

 対して、社会保険に関わる壁、家族手当に関わる壁については特定の額を越えた時点で扶養からの離脱や手当の支給停止が行われるため、「給与増加額 < 負担増加額」の逆転現象が起きることがあります。

 尚、税金に関わる壁に関して、配偶者以外の扶養親族については、社会保険の壁と同様に逆転現象が起きる場合がありますが、大学生等の特定扶養親族については配偶者特別控除と同様の特別控除が新設予定です。

まとめ

 2025年の税制改正により、所得税の壁が引き上げられ、より柔軟な働き方が可能になりました。一方で、社会保険の壁は変更がないため、扶養を外れるかどうかの判断は慎重に行う必要があります。社会保険に加入すると、保険料の負担は増えますが、将来的な年金額の増加や医療保障の充実などのメリットがあります。